私を救った深夜の小さな居場所
深夜の通販番組を見ると、
今でも思い出す人がいます。
シェルターで出会ったおばちゃんです。
たった2回しか会っていません。
名前も知りません。
でも、
人生で忘れられない大人の一人です。
あの頃の私は、
大人は怒るものだと思っていました。
だからこそ、
深夜の通販番組を見ながら隣に座ってくれたおばちゃんの存在が、
今でも心に残っています。
今日は、夜の通販番組を観ていて思ったことについて書いてみます。
深夜の通販番組の部屋
私はある理由から一度、シェルターに入ったことがあります。
夜になると、ときどき来るおばちゃん。
眠ることが怖かった私は、不安を抱えたまま部屋を出ました。
誰もいない、寝静まってシーンとしている廊下。
できるだけ音を立てないよう、ゆっくり歩きながら、廊下の先に電気がついている部屋を目指して進みました。
ノックをするか悩んだものの、もうここまで来てしまっているし、帰って眠れるわけでもありません。
もし怒られたらどうしよう。
部屋に戻れと言われたらどうしよう。
そんなことを考えながら、震える手でドアをノックしました。
すると、中から「おばちゃん」が出てきて、部屋にいれてくれました。
廊下は静まり返っていましたが、その部屋だけはテレビの音が聞こえていました。
人と交流がうまくできない私を特に何も思わず座布団を指します。
ためらったものの、そっと部屋に入りドアを閉めました。
緊張しすぎて固まっている私に、おばちゃんは何も言わずテレビをみていました。
それが、夜中の「通販番組」だったのです。
「これほしい」と言ったおばちゃん
大袈裟な口調で放送されている通販番組をみながら、
何か言われるのではないか。
寝ていないことを怒られるかもしれない。
不安がどんどん膨らむ中、ふとおばちゃんが
「これほしい」とつぶやきました。
まるで、いつも横にいる知り合いとテレビを見てるような声です。
ビックリしておばちゃんの顔を見たら、
何も言わずに笑ってくれました。
とくに優しいわけでも、
冷たいわけでもない声。
気づくと、ぎゅっと入っていた肩の力が少し抜けていました。
私はただ横に座り、夜中に見る通販番組。
時折、おばちゃんは
「高いわね」「ほしいわ」
そんなコメントをしながら観ていました。
私に何かを言うのでも、無視するのでもなく、
なぜだかホッとするような感覚がわいてきました。
朝まで通販番組を観ながら、
おばちゃんのコメントを聞いていました。
たった2回しか会っていない
おそらく私はそのシェルターに10日ほどいましたが、
おばちゃんに会ったのは2回です。
なぜかホッとできるおばちゃん。
2回目に会った日。
おばちゃんはぽつりと言いました。
「お布団でももってくればよかったね」
その言葉を聞いた瞬間、
胸の奥がじんわり温かくなったのを覚えています。
その晩も、朝まで隣に座り通販番組を観ていました。
不思議と帰りたいとは思いませんでした。
ありがとうと言いたい。
もうおそらく会うことがない寂しさ。
伝えたかったけれど、私は声を出せません。
ただ、静かに隣で座りながらつぶやくおばちゃんに、私は救われました。
今でも通販番組を見ると思い出す
今でも通販番組を見ると、
あのおばちゃんを思い出します。
ふとしたことに温かくなったり、
時に会いたいなと思いながら通販番組を観ると思い出します。
怒ることも責めることもなく、横にいてくれたおばちゃん。
今振り返ってもどうしてあの温かい気持ちになれたのかはわかりません。
でも、夜中一人で不安を抱えることなく、
普通に接してくれたおばちゃんの雰囲気はなんとなく覚えています。
深夜の通販番組を一緒に観たことから始まった
今でも深夜に通販番組を見ると、あのおばちゃんを思い出します。
「高いわね」
「これほしいわ」
そう言いながら隣に座っていた人です。
名前も知りません。
もう会うこともないと思います。
それでも、人が怖かった私の記憶の中には、今もあのおばちゃんがいます。
あなたにも、ふと思い出す人はいますか。



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